以前から継続して取り上げて来たLCCと高速バスを組み合わせた
新しい旅のかたちLB(エルビー)トリップ。今回は成田空港発の
高速バスを利用して金沢を訪ねてみましょう。ウイラーズが運行する
この区間の高速バスは成田空港第3旅客ターミナルを21時20分に
出発、翌朝8時15分に金沢駅に到着します。各地から成田に夕刻
以降到着するLCCのフライトから乗り継げばホテル1泊分が浮き、
しかも翌日は金沢での行動が朝からスタートできるのです。それでい
て成田-金沢間の運賃は6,500円。ちなみに東京-金沢間の北陸新幹線は
運賃と新幹線特急券を合わせると約14,000円。まさにバスなら半額
で旅が出来るのです。
金沢と言えば加賀百万石の城下町、というどうしても和のイメージが
先行してしまいますが、近江町市場あたりで朝ご飯を食べたら現代
アートの世界に迷い込んでみましょう。「金沢21世紀美術館」。
2004年に開館した比較的新しいモダンアート中心の美術館です。
周囲を芝生で囲まれた敷地の中にユニークな円形ガラス張りの建物
があって、正面はどこなのか一見見当がつかない不思議な構造に
なっています。つまり美術館の建物自体がすでにアートである、とい
う仕組みです。これはつい最近世界文化遺産への登録が決定した
建築家ル・コルビュジェ設計になる国立西洋美術館が示したパターン
でもあります。
さて金沢21世紀美術館には面白い仕掛けの作品が沢山あるの
ですが、中でも親しみやすいのがレアンドロ・エルリッピの
『スイミング・プール』です。正面入口から入ってすぐの、中庭の
ような屋根なし空間にそれはあるのですが、幅4メートル長さ7
メートルほどの小型水泳用プールに見えます。これがアート作品
だとは気付かず素通りしてしまう入館者も多いそうです。しかし
プールに近づいてよく見ると、プールの水の中に着衣の何人もの
人が立ち止まったり、動き回ったりしているのです。それは水の中
という場所だけにまさにビックリポンの光景です。タネをあかせば
このプールは地中に埋めこまれていて、水面にあたる部分にはガラス
が嵌め込まれています。そのガラスの上に水深10センチほどの水が
張られていて外からは湛水された水の水面にしか見えません。一方
水槽部分はもちろん中空で、中に入るための入り口が建物内部から
設けられています。中に入るとガラスの上の水のゆらめきが水槽の
空間全体に光の波紋を映し出して、さながらほんとうの水の中に
いるような錯覚にとらわれてしまいます。さて、それにしても
この不思議な場所を作りだしたレアンドロの意図は何なのでしょうか。
金沢の町を歩きながらそのナゾを考えてみるのも面白いかも知れません。