全国的に酷暑の日々が続いています。しかしそうは言いながらも
日一日と夏の終わりが近づいています。そんな去りゆく夏を惜しむ
なら、猛暑の京都で過ごすのも一興です。ピーチならまだ間に合います。
思い立ったら即予約、即出発です。
この時期の京都、と言えばまず思い浮かぶのは五山の送り火です。
今年も8月16日火曜日午後8時ちょうどに銀閣寺上、東山の大文字
に着火されたあと5分ごとに「妙法」「舟形」「左大文字」「鳥居形」の
順に火が灯されて盛夏の京都に抒情的な宵のひとときを演出します。
お盆の間里帰りしていた精霊がこの送り火に見送られながら冥府に帰る、
というのがこの仏教的行事に関する通説となっていますが、8月23・24日の
両日に行われる化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)の千灯供養はもう少し
仏教的無常感が強く滲み出る行事です。念仏寺は嵯峨野の奥、鳥居本に
ありますが、もし予備知識なしでここを訪れたなら、その景観に驚く
ことになるでしょう。さほど広くない境内に肩寄せ合うようにびっしりと
立つ石仏や石塔は約8000体と言われ鬼気迫る雰囲気を醸し出している
のです。吉田兼好が『徒然草』に「化野の露消ゆるときなく、鳥部山の
煙立ち去らでのみ」と記しているようにこの辺りは古来より風葬の地と
して知られていました。伝承では弘法大師空海が野ざらしになっていた
遺骸をこの地に埋葬したのがこの寺の起源とされています。夥しい石仏
や石塔は明治36年に、この地域に散在していた多くの無縁仏を掘り出して
集めたものです。千灯供養ではこの石仏や石塔に無数の蝋燭が灯されて
死者たちの霊を慰めます。五山の送り火とはまた違った、幻想的で幽玄
な世界が闇の中にうかびあがります。
真夏の京都でお薦めしたいのが貴船神社です。京阪電車の終点出町柳
から叡山電車鞍馬線で貴船口へ、そこからバスに10分揺られれば着いた
そこはまさに別天地。京都市内中心部に比べると気温は10℃低いと言われ
ています。貴船神社は縁結びのパワースポットとして知られていますが、
才女和泉式部がここに祈願をして不仲の夫との復縁を果たした、というのが
その謂れとされています。そこでこの神社には水占いというユニークなおみくじ
があります。白紙のおみくじをご神水につけると大吉小吉など文字が浮かび
上がり、占いの結果が示されます。そして夏の貴船というと何と言っても
川床料理です。清流貴船川にかけられた床は水面のすぐ上にあることから、
せせらぎの音と涼やかな風を身近に感じながら京料理をいただくという格別の
体験を味わうことができます。洛中・鴨川の大規模な納涼床に比べると
はるかにこじんまりとした設備ですが、そこがまたより水に親しみを感じる
ことが出来て「納涼」という言葉にふさわしいと思えます。尚鴨川では
「床」をゆかと読み、貴船では「とこ」と読みます。鴨川は納涼床のうりょう
ゆか、貴船は川床かわどこ、と呼びならわされているのです。